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沼の夜

背丈1mほどに育ったススキの中に

また違う種類のものが生えている

セイバンモロコシというらしい。

ススキの葉は切れ味が良いから

むき出しの脚や腕にかすれる度に

子供の頃の痛みを思い出して

身体がひくつく。

 

足元では、茶色をした小さなバッタたちが

驚いたように跳ねている。

夕陽は色を濃くしつつ

西へとゆっくりとしかし確実に向かってゆく。

風はさわやかで

こんな草むらで水鳥を見たり

草の合間から空を見上げたり

バッタの行方を探したりとしていても

僕はまったく暑くない。

太陽はもう

西の街や里山の向こうへと隠れた。

地面に近いあたりは濃いオレンジ色に

その少し上は限りなく薄い青が広がり

天へと近づくほどに色を濃くしつつ

雲に隠された頂点では群青の空になった。

残照に空が満ちると

水鳥たちの声は静まり

ときおり聴こえる程度になる。

遠く、近くで虫らは鳴き

心地よい静謐な雰囲気に浸る。

僕は街灯のあかりの下で

ここ数日ずっと読んでいる本を開いた。

空気がつめたさを増してゆく中で

文字を追いながら

答えのようなものを探している。

気がつけば2時間ほど経っており

西の空のみを覆っていた群青色は

空のどこまでも続いている。

僕は顔を真上に向けて

ただひとりの幸福を感じていた。

星々が輝き

はくちょう座が羽ばたいているから。

秋を感じるにはまだ早い気もするけれど

涼しいことと、空が広いことが嬉しくて

ここまではかなり早足で来た。

夕陽には間に合ったし

楽しくて速くなる歩調を意識して

ゆっくり水辺を歩いていくことにした。

JUGEMテーマ:写真日記

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